ワールドカップ2014ブラジル大会は、ドイツの優勝で幕を閉じました。
4年に一度の寝不足の日々の記憶から、特に印象に残った事を振り返っていきたいと思います。
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スペインの予選敗退
個人的には今大会最大のサプライズだったスペインの予選敗退。
前回大会(2010年)のファイナリストであるスペインとオランダが同組となり、大会二日目にいきなり強豪同士がぶつかるということで、開幕前から注目されていたんですが、まさかの1-5という大差でオランダの勝利。
参考:なんと1-5・・スペインがオランダに大敗した理由とは
続く第二戦のチリ戦で0-2で敗れ、スペインの予選敗退確定。。大会始まって数日でスペインが消えるって・・。
ブログには書いてませんが、チリ戦の負けは非常に衝撃的でした。
何が衝撃って、チリの猛烈な前プレです。
オランダはまだスペインにボールを持たしてカウンターという狙いが見えましたが、チリに関してはそもそもスペインにボールを持たさない!っていう守り方をで主導権を握りました。
とにかくスペインのDFラインに対して、前から数的同数でハメに行く。ボールをもらいに下がるイニエスタやシャビにもとにかくマンマークでついていって前を向かせない。超ハードマークです。
誰一人フリーでボールを持たれることのないように、最前線から全員で潰しに行ってました。スラムダンクの山王工業が見せたフルコートプレスディフェンスを思い出したのは僕だけでしょうか??
スペインは苦し紛れに前に蹴るのが精一杯でした。あのスペインがです。
そういう前から来る相手をことごとくかわしてゴールまで進むのがお家芸だと言うのに。
あれだけ前から行くということはおそらく最終ライン付近にスペースが出来やすい状態だと思います。もし裏のスペースに一発で入れられたら即ピンチです。しかしスペインは誰一人まともに前を向いて縦パスを入れられない状況に陥ってました。それはチリの全員の集中力と守備力と連動があって初めて出来ることです。素晴らしい組織力でした。
まあ元々、今大会のスペインはコンディションが最悪だったのだとは思います。
アトレティコ&レアル&バルサの選手達は、CLおよびスペインリーグの最終節まで優勝を賭けて激しく戦った傷跡が相当残っていたはずです。身体の傷もですが、あれだけ激しく戦ったら精神的に燃え尽きるのが普通です。
スペイン代表のレギュラークラスはほぼ上記の3チームの選手でした。
参考:W杯2014 スペイン代表23人の所属クラブと、落選した選手たち
様々な要因があるにせよ、優勝候補であるスペインが早々と大会から去ってしまったのは非常に寂しかったです。そして、もっともハイレベルなチームの選手が最も激しく損傷した状態で戦わねばならないワールドカップの残念な面を感じました。
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日本代表の惨敗
今回は比較的チーム状態も良く期待ムードが高まっていただけに、何もできずに予選敗退というのはショッキングでした。
まあしかし終わってみれば、やっぱりワールドカップっていうのは単純にレベルが高いし、各チームの勝利への気迫が半端じゃありません。
ただね、さらにショックなことを言うと、コロンビアは別格でしたがコートジボワールとギリシャは全然大した相手ではありませんでした。言うなればグループCは非常にレベルの低いグループでした。
一発勝負の短期決戦とは言え、そのグループCで最下位になったというこの屈辱的な現実を受け入れるのは辛いですが、しょうがない。
自分たちのサッカーが出来なかったとか言ってる場合じゃありません。そんな都合のいいサッカーさせてくれる相手はワールドカップにはいません。
理想を追い求めるのも大事ですが、サッカーというのは11人でやるスポーツではなく22人でやるスポーツです。理想ではなく現実を見つめなおして、また一歩一歩前進して行ってもらいたいです。
こんなこと8年前も言ってたような・・
日本だけでなくアジア勢は全惨敗でした。実力の差をまざまざと見せつけられました。
参考:W杯2014 アジア勢(日本、韓国、オーストラリア、イラン)の戦績と総括
新星ハメス・ロドリゲス
南米予選でゴールを決めまくっていたコロンビアのエース、ファルカオが不在ということで、どうなるかと思ったコロンビアですが、まだまだとんでもないのが居ました。
ハメス・ロドリゲス22歳です(7月12日で23歳になりました)。
5試合で2アシスト6ゴールと、今大会もっともブレイクした若手プレーヤーです(日本戦で2アシスト1ゴール・・)。
既にレアルマドリーが巨額のマネーをチラつかせて触手を伸ばしているらしいです。
今後、欧州のトップリーグで高いパフォーマンスを見せることができるか?注目が集まります。
コスタリカの躍進
ウルグアイ、イングランド、イタリアと同組だったことから、おそらく32チーム中、予選敗退の可能性が最も高いと思われていたであろうコスタリカが、ベスト8に入りました。
コスタリカは大会直前の親善試合で日本に1-3で負けているんです。
正直、そんな大したチームではないです。
しかしGKナバスを中心とした守備陣が身体を投げ出してゴールを守る気迫はすさまじかったです。特に準々決勝でオランダ相手に120分間ゴールを守り切ったのは凄かった。PK戦で惜しくも敗れはしましたが。
初戦のウルグアイ戦で勝利して一気に波に乗ったんでしょう。そういう意味では4年前の日本代表に似ているなと思います。4年前、日本がもしトーナメント1回戦でパラグアイとのPK戦で勝っていたら、日本もベスト8に入ってたわけです。コスタリカはオランダにPK戦で勝ってたらベスト4だったので今回のコスタリカの方がもうワンランク上ですが。
まあ、こういうチームが勝ちあがれるのもサッカーの面白いところです。
アフリカ勢の脅威
今大会のアフリカ勢はいいチームが揃っていました。
予選落ちしたカメルーン、コートジボワールは正直、そんなに強いという印象はなかったですが。
ガーナも予選落ちだったのですが、ガーナはグループGでドイツ、ポルトガル、アメリカという強烈な面子が相手だったので組み合わせ的に不運だったと言えるでしょう。結果的に優勝したドイツと2-2で引き分けた試合なんかは強烈にハイレベルでした。もしガーナがコートジボワールの代わりにグループCに入っていたら間違いなく予選突破していたはず。
もちろん予選を突破したアルジェリアとナイジェリアも、それぞれ1回戦で敗れはしましたが非常にいいチームでした。
アフリカのチームは、GKが超絶な反射神経と跳躍力でゴールを守り、FWが強烈なスピードとフィジカルで相手ゴールに襲いかかります。その迫力はアフリカ人ならではです。
そのフィジカルに頼るだけではなく、今大会のアフリカ勢はチームとして組織的に機能していたと思います。アジアとの実力の差は歴然です。
GKの大活躍
今大会はGKの活躍が目立ちました。個人的に特に印象に残った5人。
ドイツのノイアー。至近距離からのセーブも素晴らしい上、守備範囲の広さは異常です。現在世界NO.1のGKと言えると思います。
メキシコのオチョア。超至近距離からの「決まった!」と思えるシュートを何度防いだことか。今大会ノリに乗っていました。
コスタリカのケイラー・ナバス。コスタリカの脅威的な堅守を最後尾から支えた彼の存在は大きかったと思います。
ナイジェリアのエネアマ。アフリカ人特有のバネと反射能力は人間業とは思えません。ゴールを決められたメッシと試合中にいきなりフレンドリーになるという底抜けの明るさが笑えた。
アメリカのハワード。トーナメント一回戦のベルギー戦で見せたスーパーセーブの数々は驚異的でした。120分間で20本ぐらいの枠内シュートを止めたと思います。
GKのプレーの可否はゴールに直結し、試合結果を最も左右する要素と言えます。強いチームには間違いなく頼れる守護神が居ます。
GKに求められるのはシュートストップだけではありません。
最終ラインと連動してポジショニングし、裏のスペースをケアする集中力、センス、そしてボール保持、ビルドアップに関われるだけのキックを含めたボールコントロール技術が今後ますます求められると思います。
王国ブラジルの崩壊
開催国ということもあり優勝候補筆頭だったブラジルが、準決勝のドイツ戦で1-7という想像を絶する大差で敗れました。
準々決勝のコロンビア戦でネイマールが怪我により戦線離脱、さらにチアゴ・シウバのイエロー累積による出場停止があったとは言え、あんな無残な負け方をするとは。。
参考:ブラジルがドイツに大敗した理由(ブラジルの人聞こえますかー)
おまけに3位決定戦ではオランダに0-3と全く良いところ無く敗れ、なんとも後味の悪い最後になりました。
ブラジルは、計算し尽くされた組織力よりも、才能ある選手たちの閃きによる攻撃と南米特有の狡猾な駆け引きを駆使したサッカーで世界のトップに君臨してきました。しかしワールドカップの舞台では2002年に優勝して以降は二大会連続で準々決勝で敗退と、このところなかなか満足いく結果を残せていません。
ネイマールという圧倒的な才能を中心に、そして世界最高クラスのDFラインを揃え、中盤にも守備的な選手を並べ、奔放さよりもむしろ手堅いチームを作って挑んだ結果の大惨敗です。
ここ数年のサッカーは守備戦術の発達、そして守備にかけるエネルギーの増加が非常に顕著です。一番相手ゴールに近いFWでさえも如何にゴールを決めるかよりも、如何に守るかを意識してプレーするチームがほとんどです。
世界一サッカーが上手い選手が多い国ブラジルの大敗は、サッカーというスポーツの大きな転換点のようにも思えます。もしかしたら個人技で勝負できる時代は終わったのかも知れません。
ドイツの優勝
優勝したのは、準決勝で開催国ブラジルを奈落の底に落とし、決勝戦ではアルゼンチンを退けたドイツでした。
南米開催でのワールドカップでヨーロッパのチームが優勝したのは史上初です。しかも南米の2強を倒しての優勝ですから、実力的にはドイツが頭一つも二つも抜け出ていたと言えるかも知れません。
今大会のドイツの土台はバイエルンです。
バイエルンからサイド突破担当のロッベンとリベリーが抜けて、エジルとシュールレが入ったことによって、より組織力が高まったような印象です。
決して誰かの個人技に頼るわけではなく、皆で同じ崩し方を共有して、連動して、誰一人サボることなく走り続けられるチームでした。もちろん、個人技術も世界トップレベルなんですが、一人で何かしてやろうという選手はいません。それぞれが自分の役割を100%のチカラでやり遂げるだけです。
大事なのは選手それぞれに的確なタスクを与えるということです。それは言うまでもなく監督のチカラです。
言うのは簡単ですが、世界のトップクラスの個が集まったチームをここまで組織的に機能させるというのは、ものすごい難しいと思います。
まさにレーブ監督が長年に渡りコツコツと積み上げてきた結果がこのチームなんだと思います。
参考:サッカーにおける「組織力」とは何なのか?
もっと言えば、ドイツの育成システムの勝利です。ドイツは2000年のユーロで惨敗してから若手の育成システムを抜本的に変えたそうです。その結果、ミュラーやエジルやゲッツェと言った超優秀なプレーヤーが育ち、今大会の優勝という一つの大きな成果となったわけです。
そして忘れてはならないのはペップ・グアルディオラの存在。
2013-14シーズンからバイエルンにペップが就任。1年目にいきなりブンデスリーガを過去最速で優勝を決めるというぶっちぎりの強さを見せました。
もちろんバイエルンは元々強いのでアレですが、バイエルンの組織力をさらに高め、一つ上の次元の戦術を叩きこんだのは間違いなくペップであり、そのドイツ代表への影響は決して小さくなかったはずです。
2010年のスペイン優勝に続き、ワールドカップの優勝の影にペップの存在が見え隠れしているのがなんとも面白いですね。
また4年後
というわけで、記憶に残った範囲で総括してみました。
今大会はいろいろ盛り沢山で面白い大会だったと思います。今回悔しい思いをしたチームがこれからどう変わっていくのか?王者ドイツの時代は続くのか?
またあっという間にやってくる4年後が楽しみです。
あ、日本も置いていかれないように頑張れ!