元々はコンピュータオタクの間で生まれたという仮想通貨ビットコインが、ここ数年とんでもないスピードで現実社会に広がり始めている。
ビットコインは新たな通貨として定着することができるのか?
そもそもおカネって何なのか?
長々と語らせてもらいます。
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通貨の不思議
”通貨”については、それだけで本一冊どころでは済まない壮大かつ深淵なテーマです。
これはビットコインがどうこうではなく、僕らが普通に使っている紙幣が既に興味深いですよね。
あれ、ただの紙ですからね。
10000円札を燃やすなんてとても勿体無くて出来ませんよね。(そんなことしたらダメです!)
ただの紙に僕らはそれだけの価値を見いだしています。価値があると思い込んでいます。
価値があると思い込んでいるからこそ皆がそれを欲しがり、皆がそれを欲しがるからこそ価値があるんです。
全員催眠術にかかっているような状態です。
不思議ですよね。
なぜ、皆、催眠術にかかったかのような不思議なことが起こるのかと言うと、国家という強力な安定装置があるからです。
軍事力を含めた外交力を背景に絶対侵されない国土を持ち、「この国ではこの紙をおカネとして使います。納税はこの紙でしか出来ませんよ。」というお上のお達しがあるから、皆、その価値を信じているんです。
そして、その紙の価値を壊さないように、中央銀行がその発行量を調整したりしています。
つまりおカネの価値を裏付けているのは、国への信頼なんです。
なので、国への信頼が揺らぐとおカネは一気にただの紙切れに姿を変えます。
ハイパーインフレというやつです。
ハイパーインフレというのは、おカネの価値が一気に崩壊するような社会的な現象を言います。
おカネの価値が無くなるなんて今の日本では想像もつかないですが、過去にハイパーインフレは世界中で何回も起こっています。
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ハイパーインフレ
ドイツで起きたハイパーインフレ
有名なのが、第一次大戦後にドイツで起きたハイパーインフレ。
敗戦により多額の賠償金を請求されたドイツはそれを支払う為にマルク札を大量に刷っちゃったんですね。
カネが要るなら刷って渡せばいいじゃないかと。
これをやってしまうと、マルク札に対する信用が崩れます。そんな何の裏付けもなく刷り放題の紙幣に価値はあるのか?と。
そういう疑心暗鬼が広がり始めると、自分が一生懸命働いて貯めてきたおカネを大事に持っていることが逆に怖くなります。
もしこのおカネで何も買えなくなったら、せっかく貯めてきた貯金がパーになる・・って。
そうなると、今のうちに貯金してあるマルクを違うモノに替えておこうという人が増えてきます。
マルクの需要が減るわけです。
紙幣というのは元々がただの紙なので、おカネとして使えなくなるなんてことになれば誰も要りません。その価値の下がり方はまさにスパイラルです。
第一次対戦前(1914年)の時点で1ドル=4.2マルクだったのが、終戦から4年後(1923年)の時点で、1ドル=4兆マルクになっていたそうです。
ここまで来ると、まさに紙切れです。
ダンボールに入れて持ち運ばないといけないぐらいの札束を抱えて誰がトイレットペーパーを買いに行くでしょうか?そのダンボールいっぱいのお札をトイレに置いておく方が手っ取り早いし安上がりです。
上の写真は、子供が札束を積み木代わりにして遊んでいるの図です。
たぶんこの程度の札束ではオモチャも買えないんでしょう。
日本でこんなことしたら、お父さんお母さんに怒られるので、良い子のみんな札束で遊んだらアカンよ。
参考:◆第8 ドイツのハイパーインフレについて
ジンバブエで起きたハイパーインフレ
つい数年前にも超ハイパーインフレがありました。アフリカのジンバブエです。
経済政策の失敗に次ぐ失敗により、当時国内で普通に流通していたジンバブエ・ドルの価値が崩壊しました。
ちょっとパンでも買いに行こうものなら両手に札束を抱えていくことになります。財布なんて役に立ちません。
心優しい政府は、一般人が大量の札束を抱えて買い物に行かなくてもいいように、100,000ジンバブエ・ドルを作りました。これならたった1枚で100ジンバブエ・ドル1000枚分ですのでかなり荷物が軽くなりました。
しかしどんどんモノの値段が上がる(おカネの価値が下がる)ので、政府はそれを追いかけるようにどんどん桁の大きなお札を発行して対応しました。
馬鹿です。
おカネの流通量を増やせば増やすほどおカネの価値は下がるので、相対的にモノの値段はガンガン上昇します。
最終的に、100,000,000,000,000ジンバブエ・ドル札が発行されたそうです。普通読めませんよね(笑)100兆ドル札です。
ここまで来ると逆に歴史の証拠としての価値があるっていう。www
こんな馬鹿な話が21世紀の出来事とは信じられませんよね。
参考:ジンバブエ・ドル – Wikipedia
おカネの価値
こんな風に、そもそもが紙切れのおカネというものの価値を保つのは、実は大変なことなんです。
もし10000円札をもらえるなら欲しいですよね。
逆にあげるのは嫌ですよね。
当たり前ですね。
数字を書いたただの紙にそれだけの価値がある事をここまで浸透させることが出来たのは奇跡的なことです。
貝殻や石ころから始まった通貨は、数千年の時を経て、現在の形にまで進化してきました。
その辺の詳しい話は、本で読んでもらうとして(この本はヤバいです。読んだことある人が多いかな?)。
10000円と書いた紙に、10000円の価値を持たせる。
まるでペテンのような話ですが、これは人類が生み出した素晴らしいシステムとも言えます。
安定して価値のあるおカネが広く流通しているからこそ、長期的な成長を見越した投資活動や、研究活動が出来て、結果的に科学技術や経済が発展するわけですから。
しかもその安定した価値を生み出すのに、わざわざ苦労して金山を掘り起こしたり、貴金属をピカピカに磨いて加工したりすることなく、ただ数字を書いた紙を刷るだけでいいんですから。
しかしながら、この紙切れシステムは発行者にとんでもない権力と権益をもたらすので、一筋縄では行きません。その発行権を巡って数世紀に渡り人類は争いを繰り返してきました。
ロスチャイルド一族の陰謀論は有名(有名な陰謀ってwww)ですが、今でもほとんどの多国籍企業は彼らの末裔が牛耳っているとかっていう話も非常に興味深い話です。
↑こういうちょっと眉唾もののおカネに関する陰謀論はめちゃくちゃ面白いですよ。
こういった陰謀論めいたことがどこまで事実かは知りませんが、第二次大戦でアメリカが大勝利をおさめ、その後、ドルが世界の基軸通貨となりアメリカがイギリスに変わり世界の覇権を握ってきたのは事実です。
僕らが何の疑いもなくその価値を信じ込んで大事にしている紙切れには、血で血を洗うような歴史が刻まれているわけです。
ビットコイン
新たなるマネーシステム
そんな数世紀に渡る争いの後、とりあえずの安定を見せている現在のおカネ事情なんですが、とんでもない新種が現れてしまいました。
ビットコインです。
ついに姿を現したIT革命の本丸です。
インターネットという実態のない、それでいて世界中に深く根付いた、今となっては社会に必要不可欠なインフラ。
その絶対的な存在と言えるネットワークに価値を担保させるシステムを組み込んだ新たなるマネーシステムです。
ビットコインの価値を保つのには国も中央銀行も関係ありません。
世界の覇権も関係ありません。
その発行権を握っているのは、誰でもなくどこの国でもなく、インターネット内に組み込まれた無機質なプログラムなんです。
ビットコイン説明動画
ビットコインの「送金」についての基礎知識(誰も解説してない仕組みのところの解説) | 大石哲之ブログ
仮想通貨「Bitcoin」を完璧に理解するために知っておきたいことまとめ – GIGAZINE
ビットコインはどのようにして動いているのか? 数学を使わずに理解するビットコインの動作原理
火や風のチカラに頼っていた人類が、科学を進歩させることで、電力を操り、世界中で電力を安定供給できるようになり、ついには世界中にインターネットというインフラを普及させてきたのは、もしかしたら仮想通貨を生み出す為だったのではないか?というぐらい必然的かつ革命的なことだと思います。
インターネットという絶対的な集合知に神が宿った瞬間です。
シビライゼーションのゴールイベントに「仮想通貨を普及させる」ってのも追加したらどうでしょうか?
流通し始めたビットコイン
ビットコインはここ数年、というかここ一年で劇的にその名を広く知られるようになりました。
ちなみに、世界で初めて行われたビットコインでの決済は、2010年5月らしいです。ある人が1万BTC(ビットコインの単位)でピザ2枚を購入したのがそれだと言われています。
そのピザがいくらだったのか知りませんが、仮にピザ2枚で20ドル(約2000円)だったとすると、その時点で1BTC=0.002ドルということになります。
世界で初めてビットコインがそのピザ屋に支払われてから約3年後、
2013年3月、キプロスの金融危機で資産の逃げ場としてビットコインが注目される。
2013年10月、中国のネット検索大手の百度(バイドゥ)がビットコインを決済通貨として採用する。
というビットコインの需要を高める大きな出来事があり、同年11月にはなんと1BTC=1200ドルを突破しました。
1BTC=0.002ドルが、3年で1200ドルです。
3年で60万倍です。
1BTCを1200ドルで計算すると、ピザ屋の店主があの時受け取った1万BTCは1200万ドル(12億円)ということになります。
ピザ屋の店主はそのビットコインをその後どうしたのか?非常に気になるところです。
ところが2013年12月に中国政府は、国内の金融機関に対しビットコインを使った金融商品や決済サービスの提供を禁止する旨を通知したそうです。
あまりにビットコインが普及してしまうと、人民元の法定通貨としての地位を損なってしまうからです。
さらに2014年2月、ビットコインと普通の通貨の取引を仲介する大手取引所であるMT.GOXが、「当社が預かっていたビットコインが全部消えた」とかワケの分からんことを言い出して数百億円もの損失を出した為に、ビットコインの安全性にケチがつき、その価値は一気に下がりました。
2014年3月現在では1BTCが600ドル台で推移しています。
このように、上下に激しい値動きを見せてはいるものの、その価値(需要)は確実に伸びてきています。
国家による抑圧
流通し始めたとは言え、実際には、ごく一部のIT企業が決済にビットコインを採用したり、金融商品の一つとして認知され始めたぐらいのものです。
もし、コンビニでも本屋でも遊園地でも「どうぞビットコインでお支払いできますよ。」と言われたら、あなたはビットコインに価値を見出しますよね。もしもらえるならもらいたいと思いますよね。
しかし、コンビニも本屋も遊園地も、ビットコインを受け取ったはいいけどそのビットコインを商品の仕入れなり人件費なりで使う事が出来なかったら、困りますよね。というか使えないならそもそもビットコインで決済しないですよね。
これはタマゴが先かニワトリが先かみたいな話になります。
おカネというのは、皆が欲しがるからこそどこででも使えるし、どこででも使えるからこそ皆が欲しがるんです。
最も手っ取り早く皆が欲しがるようにする方法は、国家がその通貨を自国通貨として認めることです。
具体的に言うと、ビットコインで納税してもよいという法律が施行されることです。
国家の信任を得ることができれば、ビットコインの需要は一気に高まるはずです。
しかし、それはそう簡単な話ではありません。
中国が懸念しているように、ビットコインが国内で本格的に流通してしまえば、自国通貨(元)の需要は大きく下がる可能性があります。
せっかく発行権を握っている元が見向きもされなくなると、中央銀行の権威はガタ落ちです。
現在では、直接であれ間接であれ、政府が発行した国債を中央銀行が引き受ける代わりに、新たに刷った紙幣を市中にをバラまくことで、おカネの流通量をコントロールしています。そして政府が借金しやすい仕組みが保たれています(その良し悪しは置いといて)。
ビットコインが国内で本格的に流通するということは、そういった政府と中央銀行が連携して自国の通貨を安定的にコントロールする術が奪われることを意味します。
元来保守的である国家というシステムがその権利を自主的に手放すようなことをするはずがありません。
今でこそ、ビットコインの流通に表立って反対している国は、中国、ロシア、インドネシアぐらいですが、もし本格的に流通し始める気配が見えれば、国家による抑圧が激しくなるかもしれません。
先日のMT.GOXの取引停止騒ぎも、もしかしたらビットコインの信頼を地に落とすために仕組まれた陰謀なんじゃないか?なんていう説もありうる話だと思います。
民間企業による大博打
国家がトップダウン方式でビットコインを認めるなんてことはまずあり得ません。
草の根レベルで、広く一般に普及していくのかどうかに、ビットコインの命運がかかっています。
果たして、ビットコインでの決済を認める民間企業が今後、現れるのか?
もし今後、ビットコインのレートがどんどん高まるのなら、とりあえずは使えなくてもビットコインという資産を蓄える為にビットコインでの決済を認めてしまおうと言う企業が出てくる可能性は十分考えられます。
もちろんレートが上がる保証はないどころか、ゼロになる可能性もあるので大博打です。
しかし、そのような大博打を打つ企業が現れ、もし、ローソン全店舗でビットコインによる決済が可能になった!なんてことになったら、ビットコインの需要は一気に高まるでしょう。
下がる時もスパイラルですが、上がる時もまたスパイラルです。
このハイリスクハイリターンの大博打に乗ってくる企業が果たして現れるか?
ビットコインの本当の問題
そんなこんなでまだまだ不安定なビットコインですが、最も怖いのは国家による抑圧ではありません。
一番、怖いのは、次世代の仮想通貨が台頭することです。
次世代のテクノロジー、より高等なアルゴリズムによって、その安全性と利便性を担保されたような次世代型仮想通貨が現れた時、旧型は駆逐される恐れがあります。
おそらくビットコインがここまで発展したのは、ナカモトサトシ氏によって考案されたP2P方式による取引を支えるアルゴリズムが突出して高度なものだったから、そして、その価値を保つ原理が非常に効率的で納得のいくもだっからだと思います。
しかし、先日のMT.GOXの件によって、ビットコインの危険性を露呈してしまいました。
この件は、ビットコインのセキュリティの甘さというよりも、MT.GOX社のセキュリティ(というか経営体質そのもの?)の甘さが原因だという意見が多いようです。
絶対的なセキュリティというのはあり得ないものですが、もしかしたら、より安全で、より信頼できるシステムを構築した次世代の仮想通貨が今後現れないとも限りません。いや長い目で見れば確実に現れると言えるでしょう。
今でも2番手、3番手の仮想通貨が徐々に広まっています。
「ビットコイン」が相当数普及している状態で、もし「ビットコイン」より「スーパービットコイン」の方が安全らしいぞ!ってことになると、皆一斉に「ビットコイン」を「スーパービットコイン」に替えようとするでしょう。
結果的に「スーパービットコイン」の価値は一気に跳ね上がり、「ビットコイン」価値は一気に地に落ちます。
まさにハイパーインフレです。
新たなテクノロジーに支えられた次世代型が現れる度に、世界中で通貨危機が起こる可能性があります。
そういう意味では、通貨というのは、国家が限りなく保守的な運営をすることでその価値を安定させるのが理想的と言えます。逆に日々進歩し元来革新的である科学技術にその価値を委ねるというのは、非常に危ういと言えるかも知れません。
莫大な創業者益を狙って、他の仮想通貨の価値を落としめるような輩が現れることも十分考えられます。
まあ、通貨発行権を巡って世界中で戦争が起こるよりは健全かも知れませんね。
仮想通貨の未来予想
しかしながら、おそらく今後様々な問題を乗り越えながら、世界中で普通に使える仮想通貨が普及していくと思います。
人類は常に便利な方、楽な方に進化するようにできているんだと思います。(その結果、どうなるかはさておき。)
今後数十年で、世界経済はよりグローバル化が進み、世界中で簡単に決済できる仮想通貨は無くてはならないものになるでしょう。
仮想通貨が世界中で流通すれば、円やドルのような国家が管理する実物通貨はその国内でのみ流通する程度のものになると思います。
まるで地方通貨です。
その頃には国の在り方も大きく変わっているかも知れません。
いずれ、仮想通貨を公認し保護するような国連のような世界的な機関・システムも作られると思います。
仮想通貨を不正に操る犯罪には厳罰が課されるような法律も出来るでしょう。
もしかしたら、仮想通貨を管理することを機に本格的な世界政府機関が誕生するかも知れません。
新しい時代へ
誰かが支配している価値ではなくインターネットという集合知により生み出される新たな誰のものでもない価値を、人類全体の価値として皆で上手に使うことができれば、こんな素晴らしいことはないと思います。
在るものを奪い合うのではなく、新たな価値を上手く分け合うことこそが人類にとっての最適解となるような新しい時代・新しいシステムが築かれることを願っています。
あまりに楽観的かも知れませんが、ビットコインが、資本主義という競争と狂騒の時代から、新たなる安定と共存の時代へとシフトして行くキッカケになれればいいなと思います。
あ、サッカー関係なかった。。